大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 平成10年(行ツ)33号 判決 1998年4月10日

東京都板橋区大谷口上町二七番二号

上告人

石坂俊次

右訴訟代理人弁護士

真木光夫

東京都板橋区大山東町三五番一号

被上告人

板橋税務署長 島田昌夫

右指定代理人

大竹聖一

右当事者間の東京高等裁判所平成九年(行コ)第三四号相続税更正処分取消請求事件について、同裁判所が平成九年九月三〇日に言い渡した判決に対し、上告人から上告があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人真木光夫の上告理由について

原審の適法に確定した事実関係の下においては、所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう点を含め、独自の見解に立って原審の右判断における法令の解釈適用の誤りをいうか、又は原審の結論に影響を及ぼさない部分についての違法をいうものにすぎず、採用することができない。

よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 福田博 裁判官 大西勝也 裁判官 根岸重治 裁判官 河合伸一)

(平成一〇年(行ツ)第三三号 上告人 石坂俊次)

上告代理人真木光夫の上告理由

第一 原判決は、憲法一四条一項に違反して無効である。

一 憲法一四条は、合理的理由のない差別を禁止している。

しかるに、本件増額更正処分は、明らかに上告人を何ら合理的理由なく訴外石坂正通(以下「正通」という。)と現実の税額を差別するものであるから憲法一四条一項に違反し無効である。

1 昭和六一年八月四日、本件相続が開始し、亡石坂林藏の妻である石坂まん(以下「まん」という。)、子である正道・石坂憲正及び上告人と淺子静江の五名がその相続人となった。

2 正通及び静江(以下「正通ら」という。)は、同六二年二月三日、本件相続にかかる相続財産の全部について未分割であるとして、別表1記載のとおり、取得財産の合計額を一億〇二四〇万五四〇二円、相続税の総額を一二三二万三〇〇〇円、右両名の納付すべき税額を各一六〇万一九〇〇円とする相続税の期間内申告書を提出した(甲第五号証)。

3 上告人、まん及び憲正(以下「上告人ら」という。)は、昭和六二年九月一日、本件相続に係る相続財産の全部について未分割であるとして、別表3記載のとおり、取得財産の合計額を一億五一八八万〇九五六円、相続税の総額を二七九九万六〇〇〇円、納付すべき税額を上告人及び憲正について各三三五万九五〇〇円、まんについて一三九九万八〇〇〇円とする相続税の期限後申告書を提出した。

4 上告人らは、昭和六三年二月二五日、別表4記載のとおり、取得財産の合計額を一億六七三一万七五九九円、相続税の総額を三三四九万〇九〇〇円、納付すべき税額を上告人及び憲正について各四〇一万八九〇〇円、納付すべき税額を上告人及び憲正について各四〇一万八九〇〇円、まんについて一六七四万五四〇〇円とする修正申告書を提出した。

5 右のとおり、正通らの期限内申告は、上告人らの修正申告と比較すると、取得財産の合計額が約六四九一万円少ないところ、その原因は上告人らが自用地として評価した土地(別表7の符号1ないし3)の一部を貸宅地として評価したこと等によって、土地の価額について約四六八〇万円少なく申告したこと、上告人らが相続財産として申告した定期預金及び低額貯金合計約一〇五五万円(別表9の符号3ないし6)並びに貸付金約四八七万円(別表5の符号<4>)を相続財産として申告しなかったこと、現金約三五〇万円(別表9の符号1)について上告人らの申告よりも約二九〇万円少なく申告したことにある(甲四号証、五号証)。その結果、法廷相続分が同じでありながら、上告人の納付すべき税額(四〇一万八九〇〇円)と正通の納付すべき税額(一六〇万一九〇〇円)とで二倍以上の差がついた。

6 正通らの期限内申告に対する増額更正の期限は平成二年二月四日、上告人らの修正申告に対する減額更正の期限は平成四年二月四日であったが(国税通則法七〇条、法二七条)、被上告人は、正通らに対し、相続財産となるべき現金・預金がある旨の指摘をしたものの、それについて増額更正をせず、結局、右各期限までに右各申告に係る課税価格の合計額等を同一の価格に是正する措置をとらなかった。

7 憲正は、平成二年九月四日に死亡し、石坂千恵子、石坂千夏及び石坂利加がその相続人となり、また、まんも、平成三年一一月七日に死亡し、上告人、正通、静江並びに憲正の代襲相続人である千夏及び利加がその相続人となった(甲一号証)。

8 平成五年一月一二日、東京家庭裁判所において、上告人及びまんを申立人、正通、静江及び千恵子らを相手方とする本件相続に係る遺産分割調停(以下「本件調停」という。)が成立した。同調停調書においては、遺産分割の対象とすべき相続財産を土地五筆(別表7の符号1ないし4)及び建物一棟とした上、右相続財産の全部を上告人、正通及び千恵子らが取得すること、その代わりに静江に対して代償金を支払うこと、まんは相続財産を何ら取得しないこと等の条項が記載された(乙一号証)。しかしながら、右7のとおり、まんは、本件調停成立時には既に死亡していたことから、同年二月二四日、右調停調書に明白な誤謬があったとして、当事者目録からまんに関する記事を削除し、まんは相続財産を何ら取得しない旨の右条項を削除する内容の審判がされた(乙二号証)。

9 正通らは、平成五年五月一一日、本件調停により取得した財産に係る課税価格等が正通らの期限内申告に係る額を上回ったとして、法三一条一項の規定に基づき、別表2記載の修正申告書を提出するとともに、まんの相続人として、本件調停によりまんき本件相続にかかる課税価格等が過大になったとして、法三二条一号の規定に基づく更正の請求(以下「本件更正請求」という。)をした。

被上告人は、平成六年四月二八日、本件更正請求に基づき、まんの相続税について、納付すべき税額を一六七四万五四〇〇円から一七二万七二〇〇円に減額する旨の更正を行った(甲二号証の二)。

被上告人は、平成六年四月二八日、控訴人に対し、本件調停により取得した財産に係る課税価格等が上告人の修正申告額を上回ったとして、法三五条三甲の規定に基づき、課税価格を増額すると共に納付すべき税額を四〇一万八九〇〇円から一〇四〇万四〇〇〇円に増額する旨の更正を行った。また、憲正の相続人である千恵子他に対しても、右と同様に納付すべき税額を四〇一万八九〇〇円から四三三万〇九〇〇円に増額する旨の更正を行った(甲一号証)ものである。

二 本件相続については、上告人ら及び正通らからそれぞれ課税価格等の異なる申告書が提出されていることから、被上告人はこれを適正な同一の価格に是正する措置を講じるべきであり、且、被上告人が一挙手一投足の労を惜しまなかったら簡単に同一の価格に是正する措置ができたのである。

真面目に申告した者が、虚偽の申告をした者より不当な課税をされることは、社会正義の面からみても絶対に許されない。

第二 原判決には、理由不備あり理由齟齬がある。

原判決は、上告人の心血を注いだ主張を勝手に作りかえた極めて政治的判断である。

原判決には理由不可解な理由不備及び理由齟齬(民事訴訟法第三九五条一項六号)があり、破棄を免れない。

一 原判決は、上告人の本訴請求は理由がないと判断するが、その理由は、次のとおり付加訂正するほか、原判決事実及び理由の「第三当裁判所の判断欄記載のとおりであるから、これを陰陽するとして、1原判決一八頁九行目の「減額」を「増額」に改める。2原判決二〇頁五行目の「このような」を「仮に同じ」に改め、同頁六行目の「なるのである」の次に「(なお上告人は、国税通則法七〇条が憲法一四条一項に違反するとも主張しているが、本件増額更正について国税通則法七〇条の適用はなく、右主張は本件増額更正の適否と関係しない点についての違憲をいうもので失当である。)」を加えるとしている。

二 上告人は、同一の相続で被相続人の同じ相続財産について、相続人間において異なる課税基準によることがどうして許されるのかということが理解できないのである。

上告人は、被相続人石坂林蔵が昭和六一年八月四日死亡後は、正通らの不当な主張の繰り返しによって、遺産分割の調停・訴訟等を一〇年に亘り、争わざるを得なかったのであるのに、被上告人から課税上の不利な取り扱いを受けることを何故許されるかの司法判断を求めているのであるのに原判決は何ら積極的判断を示していないのである。

第一審は「原告の主張が健全な納税意識を害されたことを背景にしていることは理解できるが、原告に対する本件増額更正が法の規定に従って行われている以上、それを無効・違法なものとすることができない。」との判断に対し、上告人は、本件増額更正が法の規定に従った形を措っているが、その実質は、被上告人の恣意的行為によってゆがめられ行われたこそ、問題にしているのであるのに、原判決にはこの点について何ら理由が付されておらず、上告人は納得することができないのである。

第三 通則法七〇条(国税の更正、決定等の期間制限)一項及び二項は憲法一四条一項に違反して無効である。

一 本件増額更正処分は、更正制限の徒過により、上告人ら及び正通らの課税価格等の是正が行われなかった結果、上告人には課税された財産が正通らには課税されなかったという単純な問題ではない。

正通らは、遺産分割において、訴状添付の現況図記載の不動産(地番二七一一、及び二七一三、二七一七のB部分)に存在しない借地権の存在を執拗に主張し続け、且借地権の存在を前提として、上告人らより四四、六八七、一二一円もの過少申告をしている。

それは正に虚偽の申告であり、過少申告であった。

しかるに、被上告人は、正通らに対し「遺産として一五〇〇万円弱の現金・預金がある。」と指摘しておきながら、修正もさせず申告受理した結果、控訴人らの申告と正通らの申告の差額は金六三、〇一六、一四〇円である。

二 被上告人が同じ相続人に対し、ある者には優遇措置を借り、ある者には差別をすることは明らかに不当違法であり、かかる場合でも通則法七〇条の制限によって是正ができないとするなら、社会主義から見ても許せない。

前記2ないし4のとおり、本件相続に関して上告人ら及び正通らからそれぞれ課税価格等の異なる申告書が提出されていることから、被控訴人はこれを適正な同一の価格に是足する措置を講じるべきであり、かつ、一挙手一投底を惜しまなかったら簡単に同一の価格に是正する措置を採ることが出来たのである。正直に申告した上告人を、虚偽の申告をした正通よりも課税において不利益に取り扱うことは、社会正義の視点からしても許されないはずである。そして、前記5のとおり、上告人の修正申告と正通の申告とでは、相続財産の総額について六〇〇〇万以上の差があり、納付すべき税額についても二倍以上の差があるのである。

上告人が、同一の相続についてこのような不平等状態のまま放置することは許されないはずであり、もし、その是正が国税通則法七〇条の規定によってできないのであれば、同条は憲法一四条一項に違反する無効な規定であるというべきである。

第四 原判決には、相続税法第一一条、及び同法三四条の解釈の違反があり、その適用に重大な瑕疵があり、且つ、瑕疵の存在が客観的に明白である。

一 租税平等原則ないし租税公平主義は、立法者を拘束する原理であるにとどまらず、その執行段階をも支配する原理である。

租税法律主義と法執行段階における租税平等原則は、ともに税法上の基本原理である。

相続税の課税は各相続人についてそれぞれ別個に独立してなされた場合、相続人間に不公平に課税された場合も生ずるが、他とははなはだしく均衡を欠く場合には違法となること明らかである。

「本来課税されるべきところを課税されたにすぎないから、不公平が本件処分を違法とするものではない。」とする論理は正に税務当局の恣意的課税を許すことであり、裁量範囲を逸脱する余地を残し租税法律主義の原則に反するものである。

二 相続税の課税において、個別の申告そのものには何の意味もないことは、相続人が複数の場合、相続人一人の相続税の申告を認めず、相続人全員の申告を要求していることからしても明らかである。

遺産分割の整わない場合でも、相続人は他の共同相続人全員の申告書を作成し、相続人各自の三文印を捺印して申告するのが現状である。

個々の申告の効力が別個独立しており、それぞれの申告が有効であるとするなら、右の様な申告は不必要である。

相続税法では、個別の申告の効力は独立しておらず、同一の課税標準とそれを基礎として計算した共同相続人中の個人の相続人の税額とが密接不可分に連携して有機的結合体をなしている。

相続税法第三〇条が連帯納付の義務を規定していることからも明らかである。

三 課税標準の違い、従って税額の違い、二個の別々の相続税課税は相続税法第一一条に違反し、違法無効である。

相続税の計算について、被相続人から相続又は遺贈によって財産を取得したすべての者に係る相続税の総額を計算し、それを基礎として各人の相続税額を計算すべき旨を規定する法一一条、共同相続人の連帯納付義務を規定する法三四条等からすると、法は、相続財産の総額及び相続税の総額が共同相続人間において同一であることを予定しているのである。共同相続人が個別の申告をした場合でも、同一の課税標準を前提とした課税をしなければならないのであって、課税標準が異なる場合には、その限度で個別申告は意味がないというべきである。共同相続人は同一の課税標準による申告をし、それを前提とした課税がされているのが実情である。したがって、同一の相続に関して異なる課税標準を用いて課税する結果と成る本件増額更正は、法一一条、三四条等に違反して無効であるというべきである。前記5のとおり、本件における課税標準及び税額の差は顕著であるから、本件増額更正の瑕疵は重大かつ明白である。

四 一個の相続である本件事案において、総遺産価格で一億六七三一万七五九九円の遺産について、六四九一万二一九七円も差があり(その割合は実に六割二分)、それを前提とする課税は重大明白な瑕疵である。

第五 本件増額更正処分は、信義則に反し無効である。

本件事案は、租税法律主義の合法性の原則を犠牲にしてもなお納税者たる上告人の信頼を保護する必要がある場合である。

一 国税の課税と申告納税制度については、訴状に主張したとおりであるが、我が国では元々相続税は、所得税、法人税と共に賦課課税であって、賦課課税の下では、本件のように一相続二課税などと言う納税者を愚弄するような出鱈目課税は起こり得ようもなかったのであるが、昭和二四年のシャープ税制で申告納税となってから、税務署は申告納税制度に胡座をかりて、プライバシーを擁護する為、公務員の守秘義務を厳格に判示した最高裁の判例を悪用して、密室行政を良い事に課税ミス、違法課税、脱税幇助等々過誤行政のやり度い放題という最悪の状況となっているのが現状である。

現行の日本の課税方式は、申告納税について言えば、<1>納税者の申告があり、<2>国が課税権に基づいて調査をし、<3>納税者が正当に申告していない場合は、<4>税務当局が修正申告を慫慂し、<5>納税者が修正申告に応じない場合に、<6>税務当局が更正処分をする手続を経ている。

更に脱税の嫌疑が濃厚なものについては、<1>納税者の申告があり、<2>税務官庁が強制査察を実施し、<3>過少申告加算税重加算税等を含む更正処分をし、<4>悪質なものには刑事告発すると言うのが世間一般の認識である。

二 本件の場合、<1>正通らが申告し、上告人らも申告し、<2>板橋税務署長が調査をし、<3>相続財産となるべき現金・預金があるとの問題点を指摘し、<4>原処分長が修正申告を慫慂し(ここ迄は同じである)、<5>上告人らは修正申告し、正通らは修正申告に応じなかった。<6>その上、原処分長は正通らに更正処分をしなかった。

この点については、税務当局は原処分長が正通らに対し、相続財産となるべき現金預金があるとの問題点を指摘したこと、正通らが右預金等につき修正申告を行っていないこと、原処分庁が右預金等について、正通らに対し、「更正処分を行っていないことは認め………」と全面的に認めており、同じく答弁書八頁で借地権の不存在についても全面的に認めている。

この事実は非常に重大であり、国家公務員法八二条二項「職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合」に該当し、懲戒免職の対象となる行為である。

更に言えば刑事々件になる危険を犯して迄、公務員が何故脱税を幇助し、更正処分をしなかったのか?

上告人ら世間一般の常識からすれば、板橋税務署長と正通らが特殊な癒着関係にあると断定せざるを得ない状況である。

被上告人が正通に何故に便宜を図ったのか?被上告人はこの疑念を晴す責任がある。

三 国税犯則取締法一二条の二「国税犯則事件における告発」は「収税官吏は間接国税以外の国税に関する犯則事件の調査に依り犯則ありと思料するときは告発の手続を為すべし」と規定し、刑事訴訟法二三九条二項「告発」は、「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」と規定しており、この告発義務違反は、国家公務員法八二条二号により懲戒免職退職金没収・天下り不可である)の対象となるのである。

四 被上告人の行為は犯罪的行為である。被上告人の本件における犯罪的行為の経過は次の如くである。

(一) 昭和六二年二月三日正通らの相続税の申告があると、その直後がら担当の係官から上告人に「正通さんの方は、既に申告済なので俊次さんの方も早く申告して下さい。」との督促の電話がかかるようになった。然しながら、上告人らは正通が家裁の調停の場で、その狂気性を遺憾なく発揮して滅茶苦茶な主張を繰り返しているので、その対応に追われており、申告が若干遅れたいた。

(二) 上告人は昭和四一年から五一年迄一〇年間、正通の会社の決算税務申告を担当していたので正通が如何に数字を誤魔化して節税(脱税)を図るかについては、つぶさに見て来たので、被上告人に正通らがどういう申告をしているかを問い質したのであるが、守秘義務を楯に被上告人は正通らの申告内容を明らかにせず、止むを得ず、上告人らは昭和六二年九月一日に申告した。

(三) 「正通らの申告」と「上告人らの申告」を比較すれば、両者の申告の差異は歴然としており、小学生でも誤魔化す事は不可能である。正通らは計画的に脱税し、守秘義務を楯に密室行政で被上告人は正通らの行為を見逃している。

(四) 上告人はその陳述書(甲第六号証)において

「<1>正通らの申告があっても原告らが申告しなければ、一相続二課税などという法を無視した非道な仕打ちに会う事もなかったのである。原告らは唯申告納税制度上の申告義務違反を問われるだけである。<2>これでは板橋税務署長の詐欺に引っかかったようなものである。詐欺まがいの手法によって原告らから税金を強奪し、金融システム維持の為と称して、納税者・国民をペテンにかけて「住専」という民間の「金貸し」の不良債権の処理に使われたのでは堪ったものではない。<3>原告らから強奪した税金で、板橋税務署長ら職員に官々接待、官民接待で飲食されたのでは堪ったものではない。<4>敗戦から半世紀がたった今程、行政に携わる公務員が腐敗堕落した時はないのではないか?この現象は今迄地下で蓄積してきた腐敗が関西大震災によって一気に地上に噴き出てきたとも言えるのである。不手際による過誤行政については、その責任を取らなければならないのである。<5>不手際によって幼稚園児に大腸菌の入った井戸水を飲ませて、園児が死亡した場合には、園長は業務上過失致死罪に問われるのである。<6>炎天下車に幼児を閉じ込めて、パチンコに熱中し、熱射病で幼児を死に至らしめた母親は仮令自分の子であっても重過失致死罪に問われるのである。<7>不手際があったと言訳すれば、課税ミスも脱税幇助も、出鱈目行政もすべて罪を許されると国税庁と板橋税署長は高言するのである。<8>原告は今、腸が煮えくり返っており、本件更正処分をした板橋税務署長をぶっ殺したい心境なのである。殺しておいて不手際があったと言訳すれば、原告は罪にならないと税務当局は言っているのである。<9>猿でも反省するというが、税務当局と板橋署長は、反省も一片の謝罪も無いのである。国税庁長官と板橋税務署長とその手下共は猿以下と言わなければならない。」

と陳述している。

上告人は、被相続人石坂林蔵が昭和六一年八月四日死亡後、寝たっきりの母亡まんを看護してきたものであり、右林蔵死亡後は、正通らの不当な主張によって、遺産分割の調停・訴訟等を一〇年に亘り、争わざるを得なかったのであるから、その上、被上告人から課税上の不平等な取り扱いを受けることはたえ難いのである。庶民の一般感情から言っても当然である。

それは単に原審判決の言うような「原告の主張が健全な納税意識を害されたことを背景にしていることは理解できるが、原告に対する本件増額更正が法の規定に従って行われている以上、それを無効・違法なものとすることはできない。」などとすることは許されない。

上告人は、原審が言うように単に「正通に対して適正な課税をしていないこと」のみが信義則違反であると主張しているものではない。

信義誠実の原則の趣旨は、単に当事者間に認められた権利の行使と義務の履行について規定するだけでなく、……当事者間にいかなる内容の権利義務が生ずるかを決定するに当っても、信義誠実の原則を標準とすべきことを要請するものと解すべきであり、その内容は、当該の具体的事情の下において当事者が相手方に対して正当にもつであるところの行動の期待を指すものである。

納税申告制度のもとで複雑な租税法規に従った申告を行うため、納税者が租税職員による指導や助言を受ける必要がある。

ところで租税法律関係については租税法律主義(憲法第八四条)が支配するため当事者間でその権利義務の内容を決定することは許されない。

他方で、租税法律主張の要請される趣旨には、納税義務者の法的安定性及び予測可能性を保障するものである。

しかし、租税行政庁が相手方に期待させたことにより、租税法律主義を徹底することによってむしろ納税者が期待したことが裏切られることとなり予測可能性が保障されないという結果を招くことが考えられるのであり、本件が正にその具体的問題である。

以上

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例